資産と構成管理データの紐付け方 / 在庫品と非在庫品

ServiceNowのHardware Asset Management(HAM)を導入した後にConfiguration Management Database(CMDB)を導入し、既存のハードウェア資産レコードとDiscoveryで取得した構成管理データを紐づけるプロセスについて、以下に詳細に説明します。

1. 資産レコードと構成管理データの概要
  • 資産レコード(Asset Records): HAMで管理される資産データは、物理的なハードウェア(例: サーバー、PC)のライフサイクル情報(調達、配備、廃棄など)や、所有者、場所、コストなどの属性を含みます。これらは通常、テーブル alm_asset に格納されます。
  • 構成アイテム(CI, Configuration Items): CMDBで管理される構成データは、IT環境の稼働中のコンポーネント(ハードウェア、ソフトウェア、サービスなど)に関する技術的な情報(IPアドレス、OSバージョン、依存関係など)を含みます。これらは cmdb_ci テーブルやそのサブテーブル(例: cmdb_ci_hardware)に格納されます。
  • 課題のポイント: HAMで手動リクエストや払い出しにより作成された資産レコードと、Discoveryで自動収集されたCIをどのように関連付けるか、またその整合性を保つかが重要です。

2. 資産レコードとCIの紐づけ方法
ServiceNowでは、資産レコードとCIを紐づけるために、以下のステップと機能を利用します。
(1) CMDBと資産レコードのデータモデル
  • ServiceNowでは、資産レコード(alm_asset)とCI(cmdb_ci)は別々のテーブルですが、関連フィールドを通じてリンクされます。
    • 資産レコードには「Configuration Item」フィールド(cmdb_ci)があり、これが対応するCIを参照します。
    • 逆に、CIレコードには「Asset」フィールド(asset)があり、対応する資産レコードを参照します。
  • この双方向のリンクにより、資産データ(例: 購入日、コスト)と構成データ(例: IPアドレス、稼働状態)を一貫して管理できます。
(2) DiscoveryによるCIの作成と資産レコードとのマッチング
Discoveryはネットワーク上のデバイスをスキャンし、CMDBにCIを自動作成または更新します。以下のプロセスで資産レコードと紐づけます:
  1. 識別ルール(Identification Rules):
    • ServiceNowのIdentification and Reconciliation Engine(IRE)を活用して、Discoveryが収集したデータを既存のCIや資産レコードとマッチングします。
    • 識別ルールは、シリアル番号、MACアドレス、ホスト名などの一意な識別子を使用して、Discoveryデータが既存の資産レコードやCIと一致するかどうかを判断します。
    • 例: 資産レコードにシリアル番号が登録済みで、Discoveryが同じシリアル番号を持つデバイスを検出した場合、IREがこれをマッチングし、CIと資産レコードをリンクします。
  2. データ統合の設定:
    • Discovery実行前に、HAMで管理されている資産レコードのキー属性(シリアル番号、資産タグ、モデルなど)を正確に登録しておくことが重要です。
    • Discoveryが新しいCIを作成する際、IREが資産テーブル(alm_asset)を参照し、一致するレコードがあれば「Configuration Item」フィールドを更新してリンクします。
  3. 手動での紐づけ:
    • Discoveryが資産レコードと一致しないCIを作成した場合(例: 資産レコードにシリアル番号が未登録)、手動で資産レコードとCIを関連付ける必要があります。
    • ServiceNowのUIで、資産レコードのフォームを開き、「Configuration Item」フィールドに該当するCIを選択するか、CMDB Workspaceを使用して関連を編集します。
(3) 手動リクエスト資産とDiscoveryの整合性
手動でリクエストし払い出した資産レコードと、Discoveryで取得したCIの整合性を保つには以下の点に注意します:
  • 資産レコードの事前整備:
    • 手動で作成された資産レコードには、可能な限り一意な識別子(シリアル番号、資産タグ、MACアドレスなど)を入力しておきます。これにより、Discoveryが同じデバイスを検出した際に自動でマッチングしやすくなります。
    • 例: ハードウェア要求で払い出したPCの資産レコードにシリアル番号を登録しておくと、DiscoveryがそのPCをスキャンした際に一致を検出し、CIと資産レコードをリンクします。
  • Discoveryの設定:
    • Discoveryのスキャン範囲(IP範囲やサブネット)を適切に設定し、HAMで管理している資産がスキャン対象に含まれるようにします。
    • Discoveryプローブが資産レコードと一致する属性(例: シリアル番号)を収集するようカスタマイズします。
  • 重複防止:
    • IREの識別ルールを適切に設定して、Discoveryが既存のCIや資産レコードを重複して作成しないようにします。
    • 例: シリアル番号を主要な識別子として設定し、同一シリアル番号のCIが複数作成されないように制御します。
(4) 自動化とService Graph Connector
  • Service Graph Connector: サードパーティツール(例: Datadog、Microsoft SCCM)と連携して資産および構成データをインポートする場合、Service Graph Connectorを利用すると、資産レコードとCIの紐づけを効率化できます。
    • 例: SCCMからインポートした資産データとDiscoveryデータをIREでマッチングし、CMDBに統合。
  • CMDB Workspace: 最新のServiceNowバージョンでは、CMDB Workspaceを使用して資産とCIの関係を可視化・管理できます。手動作成や自動収集のデータを一元管理する際に役立ちます。

3. 具体的な手順
以下は、HAM導入後にCMDBを構築し、資産レコードとDiscoveryデータを紐づける具体的な手順です:
  1. 資産レコードのデータクレンジング:
    • HAMで管理している資産レコードを確認し、シリアル番号、資産タグ、モデル、場所などの属性が正確に入力されていることを確認します。
    • 必要に応じて、CSVインポートや手動入力でデータを補完します。
  2. Discoveryの設定と実行:
    • Discoveryを有効化し、スキャン対象のネットワーク範囲を設定します。
    • 識別ルールを設定し、シリアル番号やMACアドレスをキーとして資産レコードとマッチングするルールを定義します。
    • Discoveryを実行し、CMDBにCIを作成または更新します。
  3. IREによるマッチング:
    • IREがDiscoveryデータを処理し、資産レコードと一致するCIを特定します。
    • マッチングした場合は、資産レコードの「Configuration Item」フィールドとCIの「Asset」フィールドが自動でリンクされます。
  4. 不一致データの対応:
    • マッチングしなかったCIや資産レコードを特定します(例: CMDB Dashboardやレポートを使用)。
    • 手動で資産レコードとCIを関連付けるか、資産レコードに不足している識別子を追加して再スキャンします。
  5. 継続的なメンテナンス:
    • Discoveryを定期的に実行し、CMDBと資産データを最新に保ちます。
    • CSDM(Common Service Data Model)に準拠したデータモデルを採用し、資産とCIの関係を標準化します。

4. 注意点とベストプラクティス
  • データ品質の確保: 資産レコードの識別子が不正確または欠落していると、Discoveryとのマッチングが失敗する可能性があります。導入前にデータクレンジングを徹底しましょう。
  • 段階的導入: CMDB構築は複雑なため、まずは特定の資産クラス(例: サーバー)から始めて、徐々に範囲を広げると管理が容易です。
  • CSDMの活用: CSDMを利用して、ビジネス視点と技術視点の両方で資産とCIを管理するデータモデルを構築します。これにより、資産と構成データの関連性が明確になります。
  • セキュリティ考慮: Discoveryで収集する認証情報は、SecureCube Access Checkなどのツールで安全に管理します。
  • トレーニングとドキュメント: 管理者向けにServiceNowの公式ドキュメントやNow Learningを活用し、CMDB管理の知識を深めましょう。

5. 手動リクエストとDiscoveryの疑問に対する回答
  • 疑問: 「手動でリクエストし払い出した資産と、自動取得のDiscoveryで整合性が取れるか?」
    • 回答: 整合性を取るには、資産レコードに一意な識別子(シリアル番号など)を事前に入力し、Discoveryの識別ルールでこれをキーとしてマッチングさせる必要があります。Discoveryが資産レコードと一致しないCIを作成した場合、CMDB Workspaceや手動編集で後からリンク可能です。定期的なデータ検証とクレンジングで、両者のデータが乖離しないように管理します。
  • 疑問: 「Discoveryで取得したデータが資産レコードと異なる場合どうするか?」
    • 回答: 不一致は主に識別子の欠落や不正確さが原因です。不一致データを特定し、資産レコードに不足情報を追加するか、Discoveryの収集プローブを調整して再スキャンします。必要に応じて、CMDB Health Dashboardでデータの正確性をモニタリングします。

6. 参考資料
  • ServiceNow公式ドキュメント: CMDBとDiscoveryの設定方法について詳細が記載されています。
  • Now Learning: CMDB Fundamentalsコースで、データ統合やIREの設定を学べます。
  • CSDMとService Graph Connectorの最新情報: CMDB Workspaceや自動化ツールの活用方法が記載されています。

まとめ
HAM導入後にCMDBを構築する際、資産レコードとDiscoveryで取得したCIを紐づけるには、識別ルール(IRE)を活用した自動マッチングが鍵となります。資産レコードに一意な識別子を整備し、Discoveryの設定を適切に行うことで、効率的かつ正確なデータ統合が可能です。不一致が発生した場合は、手動編集やデータクレンジングで対応し、CSDMやCMDB Workspaceを活用して継続的な管理を行います。これにより、手動リクエストの資産と自動取得のCIの整合性を保ち、信頼性の高いCMDBを構築できます。
ご不明点や具体的な設定についてさらに知りたい場合は、教えてください!


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ご質問ありがとうございます。支援先の会社で「在庫品・非在庫品」として資産を分け、フローも分けているとのことですが、これをServiceNowのHardware Asset Management(HAM)の枠組みで解釈する際、「ハードウェア資産(Hardware Assets)」と「消耗品(Consumables)」の分け方に相当するかどうかを検討します。以下に詳細に回答します。

1. ServiceNow HAMでの「ハードウェア資産」と「消耗品」の定義
ServiceNowのHAMでは、資産を以下のカテゴリに分けて管理します:
  • ハードウェア資産(Hardware Assets):
    • 物理的なIT機器やデバイス(例: サーバー、PC、ルーター、プリンターなど)を指します。
    • これらは資産として追跡され、ライフサイクル(調達、配備、保守、廃棄)が管理されます。
    • 通常、個別のシリアル番号や資産タグで識別され、CMDBの構成アイテム(CI)と紐づけられることが多いです。
    • テーブル: alm_hardwarealm_assetのサブテーブル)。
    • 例: ノートPC、モニター、データセンターのサーバー。
  • 消耗品(Consumables):
    • 消耗品は、繰り返し使用されない、または短期間で消費されるアイテムを指します。
    • 例: トナー、ケーブル、マウス、キーボード、USBドライブなど。
    • 消耗品は個別に追跡せず、数量ベースで管理されることが一般的です(例: 在庫数で管理)。
    • テーブル: alm_consumablealm_assetのサブテーブル)。
    • ライフサイクル管理は簡略化され、通常はCMDBのCIとは紐づけられません。
  • 主な違い:
    • 追跡の粒度: ハードウェア資産は個別追跡(シリアル番号単位)、消耗品は数量ベース。
    • CMDB連携: ハードウェア資産はCIとリンクされるが、消耗品は通常リンクされない。
    • ライフサイクル: ハードウェア資産は詳細なライフサイクル管理、消耗品は簡略化された管理。

2. 「在庫品・非在庫品」との比較
支援先の会社で「在庫品・非在庫品」と資産を分け、フローも分けているとのことですが、これがHAMの「ハードウェア資産」と「消耗品」に相当するかどうかは、以下のように考えられます:
(1) 在庫品(推測:ハードウェア資産に相当)
  • 特徴:
    • 在庫品は、会社が在庫として管理し、個別に追跡する資産(例: PC、サーバー、ネットワーク機器など)である可能性が高いです。
    • 調達、配備、返却、廃棄などのライフサイクル管理が行われ、資産台帳で詳細に記録される。
    • シリアル番号や資産タグで識別される場合、CMDBのCIと紐づける対象となり得ます。
  • HAMとの対応:
    • 在庫品は、HAMの「ハードウェア資産」に相当すると考えられます。
    • ServiceNowでは、alm_hardwareテーブルで管理され、資産レコードが個別に作成されます。
    • Discoveryで検出されたデバイスと紐づける際も、在庫品のシリアル番号や資産タグがキーとなります。
(2) 非在庫品(推測:消耗品に相当)
  • 特徴:
    • 非在庫品は、個別追跡の必要性が低く、数量ベースで管理されるアイテム(例: ケーブル、トナー、ペーパーなど)である可能性があります。
    • 在庫管理は行うが、資産としての詳細なライフサイクル追跡は行わない。
    • CMDBのCIとは通常関連付けられず、調達や消費のフローが簡略化されている。
  • HAMとの対応:
    • 非在庫品は、HAMの「消耗品」に相当すると考えられます。
    • ServiceNowでは、alm_consumableテーブルで管理され、在庫数や発注点などの情報が記録されます。
    • 例: トナーカートリッジを100個在庫として管理し、消費時に数量を減らす。
(3) フローの分離
  • 支援先で「在庫品・非在庫品」のフローが分離されているとのことですが、これはHAMでも一般的です:
    • ハードウェア資産のフロー: 調達リクエスト → 承認 → 資産登録 → 配備 → 保守 → 廃棄。ServiceNowのHAMでは、ワークフローや資産ステータス(例: In Stock, In Use, Retired)で管理。
    • 消耗品のフロー: 発注 → 在庫補充 → 消費。HAMでは、消耗品の在庫管理機能(例: Stockroom、Reorder Point)を使用し、簡略化されたプロセスで管理。
  • このフローの分離は、HAMのハードウェア資産と消耗品の管理方法と一致します。

3. 認識の確認:ハードウェア資産と消耗品で良いか?
支援先の「在庫品・非在庫品」の分け方と、HAMの「ハードウェア資産・消耗品」の分け方は、以下のような条件を満たしていれば同一の認識で問題ありません:
  • 在庫品が、個別に追跡され、シリアル番号や資産タグで管理され、CMDBのCIと紐づけられる資産(PC、サーバーなど)である。
  • 非在庫品が、数量ベースで管理され、個別追跡の必要性が低く、CMDBと紐づけないアイテム(トナー、ケーブルなど)である。
  • 両者の調達・管理フローが分離されており、在庫品は詳細なライフサイクル管理、非在庫品は簡略化された在庫管理を行っている。
ただし、以下のようなケースでは注意が必要です:
  • 例外的な分類: 例えば、「非在庫品」に高価なアイテム(例: 交換用HDD)が含まれ、個別追跡が必要な場合、HAMでは「ハードウェア資産」として扱うべき可能性があります。
  • カスタム分類: 支援先で独自の定義(例: 非在庫品に一部のIT機器を含む)がある場合、HAMの標準モデルと完全に一致しない可能性があります。この場合、ServiceNowのカスタマイズやマッピングが必要です。

4. ServiceNowでの実装時の考慮点
支援先の「在庫品・非在庫品」をHAMで実装する際、以下のポイントを考慮してください:
  • テーブルとフィールドの設定:
    • 在庫品 → alm_hardwareテーブルを使用。シリアル番号、資産タグ、モデル、CIリンクを設定。
    • 非在庫品 → alm_consumableテーブルを使用。数量、在庫ルーム、発注点などを設定。
    • 必要に応じて、カスタムフィールドを追加して独自の属性(例: 在庫品の特定カテゴリ)を管理。
  • ワークフローとプロセス:
    • 在庫品のワークフロー:資産リクエスト、承認、配備、返却、廃棄をHAMの標準機能で構築。
    • 非在庫品のワークフロー:発注、在庫補充、消費を簡略化し、Stockroom管理と連携。
    • ServiceNowのFlow Designerを使用して、両者のプロセスを自動化可能。
  • CMDBとの統合:
    • 在庫品(ハードウェア資産)は、DiscoveryやIREを活用してCMDBのCIと紐づけ。
    • 非在庫品(消耗品)は、CMDBと紐づける必要がない場合がほとんどだが、特定のケース(例: 高価な消耗品)ではカスタムルールで管理。
  • データの移行:
    • 既存の在庫品・非在庫品データをServiceNowにインポートする際、データマッピングを慎重に行う。
    • 在庫品はシリアル番号や資産タグで一意性を確保、非在庫品は数量やカテゴリで管理。
  • Stockroomの活用:
    • 在庫品・非在庫品ともに、ServiceNowのStockroom機能を活用して在庫を管理。
    • 在庫品は個別資産として、非在庫品は数量ベースでStockroomに登録。

5. 疑問への直接回答
これはHAMでいうところのハードウェア資産と消耗品という分け方と同じ認識で良いですか?
回答: はい、支援先の「在庫品」が個別に追跡され、ライフサイクル管理の対象である場合、HAMの「ハードウェア資産」に相当します。また、「非在庫品」が数量ベースで管理され、個別追跡の必要性が低い場合、HAMの「消耗品」に相当します。フローの分離もHAMの標準的な運用と一致します。ただし、支援先の具体的な定義(例: 非在庫品に高価なアイテムが含まれるか)やカスタム要件を確認し、必要に応じてServiceNowのモデルを調整してください。

6. 次のステップ
  • 確認作業:
    • 支援先の「在庫品・非在庫品」の具体的なアイテム例や管理ルールを共有いただければ、HAMとのマッピングをさらに精緻化できます。
    • 例: 非在庫品にどのようなアイテムが含まれ、どの程度の追跡が必要か?
  • 実装支援:
    • ServiceNowのテーブル構造(alm_hardwarealm_consumable)やワークフロー設定について、具体的なアドバイスが必要な場合、詳細を教えてください。
    • DiscoveryやCMDBとの統合についても、引き続きサポート可能です。
ご不明点や追加の質問があれば、ぜひお聞かせください!
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