民事訴訟法 司法試験重要判例

事案と判旨はGrokより

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Ⅰ 総論

訴訟と非訟

—夫婦同居の審判

—最大決昭和40・6・30


### 訴訟と非訟の概要

訴訟とは、当事者間の権利義務に関する紛争を、裁判所が対審・公開の手続により解決する手続を指します。これに対し、非訟とは、家庭内や相続などの私的関係を調整するための手続で、職権主義が強く、対審・公開を必ずしも要さない点が特徴です。夫婦同居の審判は、家事事件として非訟的手続に位置づけられます。


### 夫婦同居の審判(最大決昭和40・6・30)の事案と判旨

#### 事案

本件は、妻(相手方)が夫(抗告人)に対し、夫婦同居を求める審判を家事審判法に基づき申し立てた事件です。妻は夫と別居中であり、夫の元に戻りたいとして同居を希望。一方、夫はこれを拒否し、審判手続が非対審・非公開であることが憲法32条(裁判を受ける権利)および82条(公開裁判の原則)に違反するとして、抗告を申し立てました。原審(抗告裁判所)は抗告を棄却し、夫が最高裁判所に特別抗告したものです。<grok:render card_id="b80a51" card_type="citation_card" type="render_inline_citation">

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<argument name="citation_id">4</argument>

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#### 判旨

最高裁判所大法廷は、特別抗告を棄却し、以下の判旨を示しました。


- 家事審判法による夫婦同居の審判は、非訟事件手続に属し、裁判所が当事者の対審を要さず、職権で事実を調査し、審判を下すことができる。これは、夫婦関係の円満な調整を目的とするもので、強制執行を伴わず、家庭内の私的事柄を迅速・穏やかに解決するための合理的措置である。

- これらの手続は、憲法32条の「裁判を受ける権利」や82条の「公開裁判」の適用を受けず、合憲である。非訟的手続は、訴訟的手続とは異なり、公開・対審を強制しないことが許容される。

- ただし、審判に対する不服申立て(即時抗告など)により、事後的に救済が図られるため、権利保障に欠陥はない。


この決定は、家事審判の非訟的性質を明確にし、以後の家事事件手続の基盤となりました。


2.法律上の争訟

昭和55年1月11日最高裁判所第三小法廷判決(民集34巻1号42頁)は、『民事訴訟法判例百選』(第2版・第4版など)で「法律上の争訟」の代表判例として収載されており、宗教法人に関する内部紛争(住職罷免の無効確認、損害賠償、不動産等引渡請求)が民事訴訟の対象となるかをめぐる重要な事案です。宗教法人Y宗(包括宗教法人)とその包括下のA寺(寺院)を舞台としたもので、政教分離原則(憲法20条)と司法審査の限界を明確にした判例です。


### 事案の概要

- X(原告・上告人)は、宗教法人Y宗(被告・被上告人)からA寺の住職に任命され、A寺の規則によりA寺の**代表役員**となった。これにより、A寺所有の不動産(境内地、本堂・庫裡等)・仏像・過去帳・檀徒名簿等(本件各物件)を占有していた。

- その後、XはA寺を不在にし寺務を怠るなどしたため、檀徒の大多数の信任を失い、Y宗から**A寺住職の罷免処分**を受けた。

- これにより、XはA寺の代表役員の地位を失い、本件各物件の占有権限を失った。

- Xは、Y宗に対し、**住職罷免処分の無効確認**を求める訴え(第1請求)を提起。

- 一方、A寺(原告・被上告人)は、X(被告・上告人)に対し、**本件各物件の引渡し**および**損害賠償**を求める訴え(第2請求)を提起。

- 原審(高裁)は、宗教法人の内部事項(特に住職の地位)は宗教上の事項であり、**法律上の争訟**に当たらず、政教分離原則から司法審査の対象外であるとして、Xの請求を却下(第1請求)、A寺の請求も一部却下した。

- 争点:住職罷免の無効確認、物件引渡し・損害賠償請求が「法律上の争訟」に該当するか。宗教上の地位の判断が司法審査可能か。


### 判旨(最高裁の判断・要旨)

最高裁第三小法廷は、原判決を破棄差し戻し、次のように判示しました。


- 民事訴訟の対象となる「**法律上の争訟**」とは、私法上の権利義務の存否・内容・範囲に関する**具体的な紛争**であって、**裁判による解決が実効的に必要かつ適切**であるものをいう。

- 宗教法人の内部紛争であっても、それが**私法上の権利義務関係**(宗教法人の規則に基づく代表役員の地位、財産の管理・占有権など)に関するものであれば、法律上の争訟に該当する。

- ただし、憲法20条(政教分離)の原則により、裁判所は**宗教上の教義・信仰内容そのもの**についての判断を下すことはできない。審査は**中立的・形式的**なもの(宗教法人の規則の解釈・適用、決議・処分の手続的・形式的正当性など)に限定され、宗教的価値判断を伴うことは許されない。

- 本件では、

  - **第1請求**(罷免無効確認):単なる宗教上の地位(住職)の確認ではなく、**代表役員の地位**(私法上の資格)およびそれに伴う**財産管理権・占有権**に関する紛争であるため、法律上の争訟に該当する。確認の利益も認められる。

  - **第2請求**(物件引渡し・損害賠償):A寺の所有権に基づく私法上の請求であり、代表役員地位の喪失が前提となるが、**前提問題**として住職地位の存否を判断する必要がある場合でも、教義の解釈にわたらない限り審判可能。

- したがって、原審が「宗教上の事項」として一律に却下したのは誤り。裁判所は、規則の解釈等により中立的に審査すべき。


→ この判決は、宗教法人の内部紛争を私法関係として広く司法審査の対象としつつ、政教分離の観点から**審査の限界**(教義判断の禁止)を明確にした画期的なもの。昭和51年(オ)958号判決(確認の利益)や昭和52年大法廷判決(宗教法人内部紛争の司法審査)と併せて、**法律上の争訟**の範囲・基準を形成する基本判例群です。以降の宗教法人訴訟(代表役員選任・解任、無効確認等)で頻繁に引用されています。

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3.忌避事由


昭和30年1月28日の最高裁判所決定(昭和28年(オ)第277号 立木売買契約存在確認請求事件、民集9巻1号83頁)は、**民事訴訟法判例百選**(多くの版で第3事件として収録)に収載されている重要判例で、**忌避事由**(裁判官の忌避申立ての事由)に関するものです。


この決定は、旧民事訴訟法(明治23年法律第29号)下のもので、現行民事訴訟法(平成8年法第109号)施行前のものです。


### 事案の概要

- X(原告・上告人)は、Y(森林組合・被告・被上告人)に対し、Y所有の山林に生える立木をXに売却する契約が成立したと主張して、**立木売買契約の存在確認**を求める訴訟を提起。

- 第一審はXの請求を一部認容。

- 控訴審(高等裁判所)は、契約不成立として一審判決を取り消し、Xの請求を棄却。

- Xは上告。

- 上告審(最高裁判所)において、Xは控訴審裁判官に対する**忌避申立て**を行い、その却下決定に対する不服を上告理由の一つとして主張。

  - 忌避の主な理由:控訴審裁判官が、訴訟手続中(公判前後の訴訟指揮や態度、法廷での発言・態度など)において不公平な審理をした、偏見を持っているなどとして、公平な審判を期待できないと主張。


### 判旨(要旨)

最高裁判所は、Xの上告を棄却し、以下の重要な原則を示しました。


- **訴訟手続内における審理の方法、態度などは、それ自体としては裁判官を忌避する事由とはならない**。

  - 忌避制度の趣旨は、裁判官が当事者と特別な人的・経済的関係にある場合や、**訴訟外**で既に事件について一定の心証・判断を形成している場合など、**手続外の事情**により公平・客観的な審判が期待できない場合に、裁判官を排除することにある。

  - したがって、**訴訟手続内**(公判での訴訟指揮、発言、態度、法廷警察権の行使など)の事由のみを根拠とする忌避申立ては、原則として認められない。

- 本件では、Xが主張する忌避事由はすべて訴訟手続内の事柄にすぎず、忌避事由に該当しない。

- よって、控訴審の忌避申立て却下は正当であり、上告は理由がない。


### 意義

この判例は、**忌避事由の範囲を明確に限定**した古典的判例です。以後、民事・刑事を問わず、**訴訟指揮の不当や法廷態度を理由とする忌避申立ては、原則として却下**されるという運用が定着しました(現行民訴法41条、刑訴法20条・21条の解釈にも影響)。


訴訟遅延を目的とした濫用的な忌避申立てを防ぐ趣旨が強く、今日の簡易却下制度(刑訴法24条など)の基礎ともなっています。


(参考:民事訴訟法判例百選〔第6版〕第3事件(秦公正 担当)、民集9巻1号83頁)


※これは、grokの出力ミス

忌避理由は裁判長が被告代理人の一親等の婚族関係だから。そして、代理人、かつ、終局判決なら全く判決に問題ない。


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Ⅲ 当事者・訴訟代理人

(1) 当事者の確定

4

氏名冒用訴訟

—大判昭和10・10・28

大判昭和10年10月28日(民集14巻1805頁)は、**民事訴訟法判例百選**(多くの版で第4事件として収録)に収載されている古典的判例で、**氏名冒用訴訟**(他人の氏名を冒用して提起された訴訟の効力)に関するものです。


この判例は、旧民事訴訟法(明治23年法)下のものですが、現行民事訴訟法の当事者適格・訴訟行為の有効性・再審事由などの解釈に大きな影響を与えています。


### 事案の概要

- 訴外A株式会社が破産し、Yが破産管財人に選任された。

- Yは、Xら(本件上告人ら)をA会社の株主であると称して、**株金払込請求訴訟**(前訴)を提起。

- 前訴ではYが勝訴し、判決が確定。Yはその執行力ある判決正本に基づき、Xら所有の動産に対して強制執行を実施。

- Xらは、前訴において**自分たちの氏名・肩書を冒用されて訴えを提起された**(すなわち、Xら本人が訴訟当事者として関与しておらず、代理人も選任していない)として、**前訴判決の取消し**と**前訴本案請求の棄却**を求める**再審の訴え**を提起。

- 原審(控訴審)は、再審請求を棄却。

- Xらが上告。


要するに、**他人の氏名を勝手に用いて訴えを提起された被害者**が、確定判決の効力を争う形で再審を求めた事件です。


### 判旨(要旨)

大審院(当時の最高裁判所に相当)は、上告を棄却し、以下の原則を示しました。


- **他人の氏名を冒用して提起された訴訟**は、**当事者本人に訴訟委任がなく、代理権授与もない**場合、**適法な訴訟当事者たる資格を欠く**。

- したがって、そのような訴訟でなされた判決は、**当事者適格を欠く無効な判決**であり、**執行力・既判力を有しない**。

- しかし、再審の訴えは、**確定判決の取消しを求める手続**であるところ、本件のように**当事者適格を欠くために判決自体が無効**である場合には、**再審の利益がない**(再審事由に該当しない)。

- よって、再審の訴えは**不適法**として却下されるべきである。

- Xらは、**前訴判決の無効を主張して執行異議や第三者異議**(旧民訴法559条相当、現行民執法36条・38条など)を申し立てるべきであり、再審という手続を選択するのは誤り。


### 意義

この判例は、以下の重要な原則を確立しました。

- **氏名冒用による訴訟**は、当事者本人の意思に基づかないため**無効**(当事者適格欠如)。

- 無効判決に対しては**再審**ではなく、**執行に対する異議**(執行文付与の異議、第三者からの異議など)で争うのが適切。

- 再審事由(旧民訴法481条、現行民訴法338条)は、判決が有効であることを前提とするため、無効判決には再審の余地がない。


以後、この考え方は「**判決の無効と再審の関係**」の基本として定着し、現行法下でも**当事者でない者の氏名冒用訴訟**は無効判決として扱われ、再審ではなく執行停止・異議で対処される運用となっています。


(参考:民事訴訟法判例百選〔第6版〕第4事件(松下祐記 担当)、民集14巻1805頁)


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5

死者を当事者とする訴訟

—大判昭和11・3・11


大判昭和11年3月11日(大審院民事部判決、民集15巻409頁)は、**民事訴訟法判例百選**(多くの版で第5事件として収録)に収載されている古典的判例で、**死者を当事者とする訴訟**(死亡した者を被告として訴えを提起した場合の訴訟の効力)に関するものです。


**刑事訴訟法判例百選**には同趣旨の判例は収録されておらず、本件は**民事訴訟**に関する判例です(刑事訴訟では死者に対する公訴提起はそもそも不可能であり、別途の論点)。おそらく民事訴訟法判例百選のものを指していると思われます。


### 事案の概要

- X(原告・上告人)は、昭和9年3月、訴状にYを被告と表示して、**Yに対する株取引の立替金支払請求訴訟**を提起。

- しかし、Yは訴え提起前の昭和7年4月に既に死亡しており、Zが家督相続人となっていた。

- 訴状等の送達はYの妻A(同居人)が受け取ったため、死亡事実が当初判明せず。

- 第一審では被告側欠席のため**擬制自白**が成立し、Xの請求を認容する判決が下された。

- 第一審判決の送達時に送達不能となり、Yの死亡が判明。

- XはZに対し**訴訟手続の受継**を求めるとともに、第一審判決を取り消し、本件を第一審に差し戻すことを求めて控訴。

- 原審(控訴審)はXの控訴を棄却。

- Xが上告。


### 判旨(要旨)

大審院は、Xの上告を棄却し、以下の原則を示しました。


- **当事者が死亡した場合**、その者は**訴訟当事者たる資格を失う**(当事者能力を欠く)。

- したがって、**死者を当事者(被告)として提起された訴え**は、**当事者適格を欠く不適法な訴え**であり、**訴訟は成立せず、無効**である。

- 第一審で死亡事実が判明せず判決が言い渡された場合でも、その判決は**無効判決**であり、**既判力・執行力を有しない**。

- したがって、原告Xは**第一審判決の取消しや差戻しを求める控訴**を提起する利益を欠く(無効判決に対しては取消しを求める必要がない)。

- 正しい対処は、**相続人Zを被告として新たに訴えを提起**するか、または**既存の訴訟を相続人に対するものとして受継手続**を求めるべきである。

- 本件控訴は不適法として棄却される。


### 意義

この判例は、以下の基本原則を確立した古典的判決です。

- **死者には当事者能力がない**ため、死者を当事者とする訴訟は**根本的に不適法・無効**。

- 無効判決に対しては**再審や取消訴訟**ではなく、**新たな訴えの提起**または**訴訟受継**で対処。

- 以後、現行民事訴訟法(133条:当事者能力、民事執行法など)でも、死者に対する訴訟は当事者適格欠如として却下・無効扱いされる基盤となった。

- 類似の民事判例(氏名冒用訴訟:大判昭和10・10・28)との対比で、当事者適格・訴訟行為の有効性の議論に大きな影響を与えた。


(参考:民事訴訟法判例百選〔第6版〕第5事件(小田司 担当)、民集15巻409頁)


刑事訴訟法判例百選で同趣旨の判例をお探しの場合、刑事では「死者に対する公訴提起」は起訴自体が無効(公訴提起の要件欠如)として扱われ、別途の判例(例:不起訴処分取消請求事件など)がありますが、本件は民事のものです。もし別の判例を意図している場合、追加情報をお知らせください!

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