憲法 司法試験予想問題(by Grok)

最近の事案をもとに問題と回答を作成。

1.テーマ:解散

「この前、総選挙やったばっかりじゃないかというような気持ちはある。年度末というのが、行政としては一番忙しい時期。

予算の議会もある最も多忙な時期に加えて、今まさに高市政権の物価高対策。これに基づく地方交付金が来て、それを私達は『年度内に実施してください』、もしくは昨年末に『予算案を補正予算化してください』と、みんなが、今一斉にこの物価高対策を市民に届けるべく作業を急ピッチで行っているところに、今回の解散と選挙事務。本当に関わってる職員のことを思うと、いたたまれない気持ちになる。

総理になり、与党が自由に解散できる制度というのは、与党に極めて有利な仕組みである。頻繁に選挙が行われることによって、国会議員が常に選挙を意識して、支持率が下がるけれどもやらなければならない決断を先送りにして、政策が短期的な思考になる危険性をはらんでいる。自民党政権の中でこれが総理の専権事項なんだということを、一生懸命広報をして、それを当たり前のように国民が受け止めているが、本当にそれは憲法上設計されていたことなのかという議論は絶対必要」千葉県 熊谷俊人知事


について違憲審査基準を定立した上で、解散の法的根拠を示した上で、司法試験の論文として足る回答を示して。議論の回答も明示して。


この事案は、憲法学上の古典的論点である「解散権の根拠(69条説 vs 7条説)」に加え、現代的な課題である「解散権の制約(濫用論)」を問うのに最適な素材です。

司法試験予備試験想定問題:憲法

【問題】

 衆議院の解散について、ある地方自治体の首長は、「行政実務の多忙な時期や物価高対策の執行中に選挙事務が重なることは、行政運営を著しく阻害し、国民生活に悪影響を及ぼす。また、時の内閣が自己に有利な時期を恣意的に選択して解散することは、政策の短期的思考を招き、憲法の予定するところではないのではないか」との懸念を表明した。

 この指摘を念頭に、衆議院の解散の法的根拠を明らかにした上で、内閣による自由な解散権行使(いわゆる「制度説」や「7条解散」)の憲法適合性について、司法審査の可能性(違憲審査基準の定立を含む)にも言及しつつ、論じなさい。

【解答例】

第1 衆議院の解散の法的根拠

1.問題の所在

 憲法69条は内閣不信任案の可決等に伴う解散を規定しているが、それ以外の事由による解散(いわゆる7条解散)が可能か、その根拠が問われる。

2.学説の検討と憲法解釈

 この点、解散を69条の場合に限定する「69条限定説」もあるが、議院内閣制の下では、内閣と衆議院の間に均衡を保ち、民意を問う必要がある場合が存在する。

 憲法7条は天皇の国事行為として「衆議院を解散すること」(3号)を掲げ、これに内閣の「助言と承認」を要するとする(3条)。この「助言と承認」の実質的な決定権は内閣に帰属するため、7条を根拠とした実質的決定権を内閣に認める「7条説(制度説)」が通説・判例(苫小牧編物事件)である。したがって、内閣は69条に該当しない場合でも、政治的情勢に鑑み、自らの判断で解散権を行使できる。

第2 解散権行使の憲法適合性と違憲審査基準

1.司法審査の可能性と「統治行為論」

 解散権の行使が、問題文にあるような「恣意的」なものとして憲法違反となり得るか。

 判例(最大判昭35・6・8)は、衆議院の解散は「極めて政治性の高い国家の統治の基本に関する行動」であり、その有効性の判断は「司法裁判所の審査権の外にある(統治行為論)」としている。ただし、「一見極めて明白に違憲無効」である場合に限り、司法審査が可能であるとの保留を付している。

2.違憲審査基準の定立

 解散権は広範な政治的裁量に属するが、民主主義の根幹である選挙を左右する権利である以上、無限定ではない。

 よって、その行使が憲法の基本原則(権力分立、国民主権)に明白に反する場合、すなわち、(1)不当な目的(野党の準備妨害等のみを目的とする等)が明白である場合、または(2)手続的に著しく正当性を欠く場合には、裁量権の逸脱・濫用として違憲と判断すべきである。

第3 本問における議論の検討

1.行政実務への負担と政策の短期化について

 首長が指摘する「行政実務の負担」や「政策の短期化」は、統治上の不利益ではあるが、これをもって直ちに憲法違反とすることは困難である。解散は国民の信を問う重大な機会であり、その政治的利益が行政上の事務的便宜に優先すると解釈されるためである。

2.恣意的な解散権行使の是非

 内閣が自己に有利な時期を選択すること(戦略的解散)は、現在の憲法解釈上、議院内閣制の帰結として許容されている。しかし、国権の最高機関(41条)たる国会の地位に鑑みれば、解散権が実質的に首相の専権事項として運用され、議会を無力化する道具となることは、憲法上の権力分立の趣旨に照らし、議論の余地がある。

 したがって、現状の判例理論では合憲とされる可能性が高いが、将来的には「解散権濫用」の法理を具体化し、司法が一定の歯止めをかけることが、立憲主義の観点から要請される。

以上

【解説:司法試験論文としてのポイント】

 * 法的三段論法: 「7条説」という結論を出すだけでなく、なぜその解釈が導かれるのか(3条、7条の関係)を論理的に示す。

 * 判例への言及: 「苫小牧編物事件」を引き合いに出し、統治行為論の枠組みを使いつつ、「一見明白に違憲」という例外事情の可能性を検討する。

 * 事案の特殊性の拾い上げ: 熊谷知事が指摘した「物価高対策(行政の連続性)」や「与党に有利な仕組み」というキーワードを、憲法上の「権力分立」や「濫用論」の文脈に変換して論じる。

このような「時事×判例理論」の構成は、近年の司法試験憲法の傾向(具体的な主張を憲法論に引き寄せて論じるスタイル)に合致しています。



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テーマ:奈良の鹿


### 憲法予備試験問題(司法試験形式)


#### 問題


 奈良県は、観光資源である奈良公園の鹿を保護するため、条例を制定した。同条例は、以下の内容を含む。


 (1) 特定外国人(中国国籍を有する者で、観光目的で入国した者に限る)による鹿への餌やりや接触行為を禁止し、違反した場合の罰則を、通常の日本人に対する罰金(1万円)から強化し、10万円の罰金及び即時退去命令を科すものとする。理由として、近年、中国人観光客による鹿への過度な餌やりや虐待事例が増加し、鹿の健康被害や観光地のイメージ低下を招いているためである。


 (2) 不法滞在外国人(出入国管理及び難民認定法に違反して滞在する者)と認定された者に対し、県知事が独自に退去命令を発し、従わない場合に強制執行を可能とする。理由として、奈良県内の不法滞在者が鹿の密猟や公園の治安悪化を招いているためである。


 これらの条例の規定について、A(中国人観光客で、鹿に餌やりをしたとして罰金10万円及び退去命令を受けた者)及びB(不法滞在外国人で、県知事から退去命令を受けた者)が、憲法違反を主張して争っている。A及びBの主張の当否について、違憲審査基準を定立した上で、法的根拠を示し、論じなさい。


#### 回答(論文式)


##### 第1 違憲審査基準の定立


 日本国憲法の下、国家行為の違憲審査は、最高裁判所が最終的な審査権を有する(憲法81条)。審査基準として、以下のものを定立する。


 (1) 平等原則(憲法14条1項)の審査基準:法令が合理的分類に基づくか、目的の正当性と手段の合理性を審査する。合理的分類とは、立法目的に照らし、差別的取扱いが恣意的でないことを意味し、厳格審査(人種・国籍等の嫌疑分類の場合)と緩やか審査(経済的規制の場合)を区別する(最高裁昭和58年5月27日大法廷判決・民集37巻4号345頁、薬事法距離制限事件判決参照)。外国人に対する差別は、嫌疑分類に準じ、中間審査(目的の重要性と手段の適合性)を適用する。


 (2) 幸福追求権(憲法13条)及び人権享有主体性(憲法11条)の審査基準:外国人も、憲法の人権保障の享有主体となり得るが、国家の出入国管理権(憲法22条類推)との調整を要する。審査は、手段の必要性・相当性を検討し、過度に広汎な規制は違憲とする(最高裁平成17年3月23日大法廷判決・民集59巻2号264頁、在外日本人選挙権事件判決参照)。


 (3) 地方自治の本旨(憲法92条・93条・94条)の審査基準:地方公共団体の条例は、国の法律に抵触せず、地方的事項に限られる。国の専管事項(出入国管理)への干渉は違憲とする(最高裁昭和35年6月8日大法廷判決・民集14巻7号1206頁、砂川事件判決類推)。


 本問では、これらの基準を適用し、条例の合憲性を審査する。法的三段論法として、大前提(憲法規範・判例)、小前提(事実・条例内容)、結論(合憲性判断)を用いる。


##### 第2 Aの主張の当否(特定外国人に対する罰則強化)


 Aの主張は、条例(1)が国籍による差別で平等原則(14条)に違反し、幸福追求権(13条)を侵害するとする。


 まず、平等原則の適用。


 大前提:憲法14条1項は、法の下の平等を保障し、国籍による嫌疑分類は中間審査を要する。目的が重要で、手段が適合的・必要最小限でなければならない(薬事法距離制限事件判決)。


 小前提:条例は、中国人観光客を特定し、罰則を強化(10万円罰金及び退去命令)。目的は鹿の保護だが、国籍限定は恣意的で、行為の性質(餌やり・接触)ではなく国籍を基準とするため、合理的分類を欠く。全ての観光客に適用せず特定外国人限定は、ステレオタイプに基づく差別で、手段が過度に広汎。代替手段(一般的な罰則強化)で目的達成可能。


 結論:条例(1)は平等原則に違反し、違憲。Aの主張は当を得る。


 次に、幸福追求権の適用。


 大前提:憲法13条は、個人の尊厳を保障し、外国人も享有するが、公的規制は合理的でなければならない(在外日本人選挙権事件判決)。


 小前提:罰金強化及び退去命令は、観光行為を制限し、Aの自由を過度に侵害。鹿保護の目的は正当だが、国籍差別は必要最小限を超える。


 結論:条例(1)は幸福追求権にも違反し、違憲。


##### 第3 Bの主張の当否(不法外国人に対する退去命令)


 Bの主張は、条例(2)が地方公共団体の権限を超え、憲法92条等に違反するとする。


 まず、地方自治の本旨の適用。


 大前提:憲法92条は地方自治の本旨を保障し、条例は地方的事項に限られ、国の専管事項(出入国管理)を侵害してはならない。出入国管理は国家の主権事項で、入管法が専管する(最高裁昭和53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁、マクリーン事件判決)。


 小前提:条例(2)は、県知事が不法滞在者に退去命令を発し、強制執行を可能とするが、これは入管法の退去強制手続(国家行政)を地方が代行するもの。鹿保護の目的は地方的事項だが、退去命令は出入国管理の核心で、国の専管を侵す。条例が国の法律に抵触し、統一性を害する。


 結論:条例(2)は地方自治の本旨に違反し、違憲。Bの主張は当を得る。


 次に、人権享有主体性の適用。


 大前提:憲法11条・13条は、外国人も人権を享有するが、国家の出入国管理権との均衡を要する(マクリーン事件判決)。


 小前提:退去命令は、不法滞在を理由とするが、地方の独自判断は恣意的で、適正手続(憲法31条類推)を欠く可能性が高い。国の入管手続を迂回し、Bの居住の自由を侵害。


 結論:条例(2)は人権保障にも違反し、違憲。


##### 第4 結論


 条例(1)は平等原則及び幸福追求権に、条例(2)は地方自治の本旨及び人権保障にそれぞれ違反し、違憲である。A及びBの主張はいずれも理由がある。


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テーマ:外国国章損壊罪


### 憲法予備試験問題(司法試験形式)


#### 問題


 国会は、刑法92条(外国国章損壊罪:外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。)を改正し、日本国旗をその適用対象に組み入れる立法(以下「本改正法」という)を可決した。本改正法は、理由として、「日本国旗に対する侮辱行為が国家の尊厳を損ない、社会の風紀を乱すため、外国国旗と同様に保護する必要がある」としている。これにより、日本国旗を損壊等した場合も、同罪の適用を受けることとなる。


 Eは、政治的抗議として日本国旗を焼却するデモを行い、本改正法に基づき起訴された。Eは、本改正法が憲法に違反するとして争っている。Eの主張の当否について、違憲審査基準を定立した上で、法的根拠を示し、論じなさい。


#### 回答(論文式)


##### 第1 違憲審査基準の定立


 日本国憲法の下、国家行為の違憲審査は、最高裁判所が最終的な審査権を有する(憲法81条)。審査基準として、以下のものを定立する。


 (1) 表現の自由(憲法21条1項)の審査基準:表現の自由は民主主義の基盤であり、事前抑制は原則禁止され、事後規制も厳格審査を要する。規制の合憲性は、目的の正当性、手段の必要性・相当性(最小限侵害原則)を審査し、内容規制(特定の思想・意見を対象とする場合)は特に厳しく判断する(最高裁昭和44年6月25日大法廷判決・民集23巻7号982頁、堀木訴訟判決参照)。政治的表現は核心的保護領域に属し、規制は明確性原則(過度に広汎でないこと)を満たす必要がある。


 (2) 平等原則(憲法14条1項)の審査基準:法令が合理的分類に基づくか、目的の正当性と手段の合理性を審査する。合理的分類とは、立法目的に照らし、差別的取扱いが恣意的でないことを意味し、嫌疑分類(人種・信条等)の場合に厳格審査を適用する(最高裁昭和58年5月27日大法廷判決・民集37巻4号345頁、薬事法距離制限事件判決参照)。本問では、国旗の区別(外国国旗 vs. 日本国旗)が平等に反しないかを検討。


 (3) 国家の象徴性と人権の審査基準:国旗は国家の象徴だが、憲法上強制的な敬意を課すものではなく(憲法19条思想の自由類推)、国民の表現行為を制限する規制は、人権保障の観点から慎重に審査する(最高裁平成11年2月24日大法廷判決・民集53巻2号170頁、日の丸・君が代事件判決参照)。


 本問では、これらの基準を適用し、本改正法の合憲性を審査する。法的三段論法として、大前提(憲法規範・判例)、小前提(事実・立法内容)、結論(合憲性判断)を用いる。統治行為論は適用せず、刑事罰の適用は司法審査対象とする。


##### 第2 Eの主張の当否(本改正法の違憲性)


 Eの主張は、本改正法が表現の自由(21条)を侵害し、平等原則(14条)に違反するとする。


 まず、表現の自由の適用。


 大前提:憲法21条1項は、表現の自由を保障し、政治的表現に対する内容規制は、目的が強制的利益(例: 公共の福祉)で、手段が狭隘に適合する場合にのみ合憲とする。過度に広汎な規制や曖昧な基準は違憲(堀木訴訟判決)。国旗焼却は象徴的表現として保護される(米国判例Texas v. Johnson, 491 U.S. 397 (1989)類推)。


 小前提:本改正法は、日本国旗の損壊等を「侮辱目的」で罰するが、これは政治的抗議(Eの行為)を直接対象とする内容規制。目的(国家尊厳の保護)は正当だが、外国国旗限定だった従来法を日本国旗に拡張するのは、手段として必要最小限を超える。代替手段(一般的な器物損壊罪の適用や教育啓発)で目的達成可能であり、「侮辱目的」の基準が曖昧で、萎縮効果を生む。外国国旗は外交的配慮から保護されるが、日本国旗は国内的事項で、国民の批判的表現を抑制するおそれが高い。


 結論:本改正法は表現の自由に違反し、違憲。Eの主張は当を得る。


 次に、平等原則の適用。


 大前提:憲法14条1項は、法の下の平等を保障し、合理的分類を欠く差別は違憲。立法が恣意的区別を設ける場合、目的の合理性を厳しく審査する(薬事法距離制限事件判決)。


 小前提:本改正法は、日本国旗を外国国旗と同等に保護するが、従来法は外国国旗のみを対象とし、日本国旗は一般刑法(器物損壊罪等)で対応されていた。改正により日本国旗を特別保護するのは、合理的分類を欠き、自己の国旗を優遇する恣意的差別。外国国旗保護の目的(国際関係維持)と日本国旗保護の目的(国内尊厳)は異質で、平等に扱う立法根拠が薄弱。結果として、外国国旗損壊と日本国旗損壊の罰則が同等化されるが、これは逆差別(日本国旗を過度に神聖視)となり得る。


 結論:本改正法は平等原則にも違反し、違憲。


 さらに、国家の象徴性の観点。


 大前提:憲法は国旗を国家の象徴として位置づけるが(日の丸・君が代事件判決)、これを理由に表現を刑事罰で制限するのは、思想の自由(19条)を侵害するおそれがある。


 小前提:本改正法は、国旗を「侮辱」から守るが、これは国民に敬意を強制する効果を生み、民主主義社会の批判的表現を阻害する。


 結論:本改正法は国家象徴の保護を名目に人権を侵害し、違憲。


##### 第3 結論


 本改正法は、表現の自由及び平等原則に違反し、違憲である。Eの主張は理由がある。立法の改善として、国旗保護を刑事罰ではなく民事的手法に限定すべきである。


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テーマ:外国人との共生


### 憲法予備試験問題(司法試験形式)


#### 問題


 新宿区は、近年、区内の新成人(20歳到達者)の半数が外国人(日本国籍を有しない永住者・特別永住者を含む)となったことを背景に、区民の共生を促進するための条例を制定した。同条例は、以下の内容を含む。


 (1) 外国人の新成人に対する人権保障として、区の公共施設利用や福祉サービスを、日本人新成人と同等に提供するが、外国人新成人が「日本の文化・言語に十分適応していない」と区長が認定した場合、適応プログラム(日本語教育・文化講座)の受講を義務付け、拒否した場合にサービス利用を制限する。理由として、共生社会の実現のため、外国人の社会統合を促進する必要があるためである。


 (2) 外国人の参政権として、区の住民投票(地方自治法に基づく)において、永住外国人(新成人を含む)に投票権を付与する。理由として、新宿区の多文化共生を推進し、外国人の声が区政に反映されるべきためである。


 これらの条例の規定について、F(外国人新成人で、区長の認定によりプログラム受講を義務付けられ、拒否したため福祉サービスを制限された者)及びG(永住外国人新成人で、住民投票への参加を希望するが、国が条例の無効を主張している者)が、憲法違反を主張して争っている。F及びGの主張の当否について、違憲審査基準を定立した上で、法的根拠を示し、論じなさい。


#### 回答(論文式)


##### 第1 違憲審査基準の定立


 日本国憲法の下、国家行為の違憲審査は、最高裁判所が最終的な審査権を有する(憲法81条)。審査基準として、以下のものを定立する。


 (1) 平等原則(憲法14条1項)の審査基準:法令が合理的分類に基づくか、目的の正当性と手段の合理性を審査する。合理的分類とは、立法目的に照らし、差別的取扱いが恣意的でないことを意味し、厳格審査(人種・国籍等の嫌疑分類の場合)と緩やか審査(経済的規制の場合)を区別する(最高裁昭和58年5月27日大法廷判決・民集37巻4号345頁、薬事法距離制限事件判決参照)。外国人に対する差別は、嫌疑分類に準じ、中間審査(目的の重要性と手段の適合性)を適用する。共生を目的とする場合でも、差別が過度でないかを検討。


 (2) 幸福追求権(憲法13条)及び人権享有主体性(憲法11条)の審査基準:外国人も、憲法の人権保障の享有主体となり得るが、国家の出入国管理権や地方自治との調整を要する。審査は、手段の必要性・相当性を検討し、過度に広汎な規制は違憲とする(最高裁平成17年3月23日大法廷判決・民集59巻2号264頁、在外日本人選挙権事件判決参照)。教育義務化等の規制は、個人の自由を尊重するかを審査。


 (3) 地方自治の本旨(憲法92条・93条・94条)及び参政権(憲法15条・93条)の審査基準:地方公共団体の条例は、国の法律に抵触せず、地方的事項に限られる。参政権は国民固有の権利(憲法15条1項)であり、外国人の地方選挙権は憲法上許容されない(最高裁平成7年2月28日第三小法廷判決・民集49巻2号639頁、外国人地方選挙権事件判決)。住民投票も、憲法93条の「住民」に日本国民を限定し、条例による外国人の付与は国の専管事項(選挙法)を侵す可能性を審査。


 本問では、これらの基準を適用し、条例の合憲性を審査する。法的三段論法として、大前提(憲法規範・判例)、小前提(事実・条例内容)、結論(合憲性判断)を用いる。新宿区の新成人の半数が外国人という背景は、多文化共生の文脈を提供するが、憲法適合性を左右しない。


##### 第2 Fの主張の当否(外国人新成人に対する適応プログラム義務化)


 Fの主張は、条例(1)が国籍による差別で平等原則(14条)に違反し、幸福追求権(13条)を侵害するとする。


 まず、平等原則の適用。


 大前提:憲法14条1項は、法の下の平等を保障し、国籍による嫌疑分類は中間審査を要する。目的が重要で、手段が適合的・必要最小限でなければならない(薬事法距離制限事件判決)。


 小前提:条例は、外国人新成人を対象に「適応認定」をし、プログラム受講を義務付け、拒否でサービス制限。目的(共生促進)は正当だが、国籍を基準とした分類は恣意的で、日本人新成人には適用されないため合理的分類を欠く。認定基準(「十分適応していない」)が曖昧で、区長の裁量が過大。代替手段(任意プログラムの奨励)で目的達成可能であり、新成人の半数が外国人という事実は差別を正当化しない。


 結論:条例(1)は平等原則に違反し、違憲。Fの主張は当を得る。


 次に、幸福追求権の適用。


 大前提:憲法13条は、個人の尊厳を保障し、外国人も享有するが、公的規制は合理的でなければならない(在外日本人選挙権事件判決)。


 小前提:プログラム義務化及びサービス制限は、Fの教育選択の自由や福祉受給権を侵害。共生の目的は重要だが、義務化は強制的で、個人の文化的アイデンティティを無視し、必要最小限を超える。新宿区の多文化状況は共生を要請するが、強制は人権侵害。


 結論:条例(1)は幸福追求権にも違反し、違憲。


##### 第3 Gの主張の当否(外国人への住民投票権付与)


 Gの主張は、条例(2)が地方自治の本旨(92条等)に違反し、参政権の趣旨を害するとする(ただし、国側の主張として条例無効を争う)。


 まず、参政権及び地方自治の本旨の適用。


 大前提:憲法15条1項は、公務員選定罷免権を国民固有の権利とし、外国人の地方参政権は憲法上許容されない(外国人地方選挙権事件判決)。憲法93条の「住民」は日本国民を指し、条例による外国人の投票権付与は、選挙法の枠組みを超え、違憲(最高裁昭和53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁、マクリーン事件判決類推)。


 小前提:条例(2)は、永住外国人(新成人を含む)に住民投票権を付与するが、これは憲法の参政権を外国人に拡張するもので、地方的事項を超える。目的(多文化共生)は理解できるが、新宿区の外国人新成人の多さは、憲法の国民限定を変更する根拠とならない。住民投票は区政の民主的正当性に関わり、外国人の付与は国家の主権事項を侵す。


 結論:条例(2)は参政権の趣旨及び地方自治の本旨に違反し、違憲。Gの主張(条例有効の立場)は当を得ず、国の無効主張が妥当。


 次に、人権享有主体性の適用。


 大前提:憲法11条・13条は、外国人も人権を享有するが、参政権は国民に限定される(外国人地方選挙権事件判決)。


 小前提:投票権付与は外国人の政治参加を促進するが、憲法の枠外で条例がこれを創設するのは、法的安定性を害し、逆説的に人権の平等を歪める。


 結論:条例(2)は人権保障の観点からも違憲。


##### 第4 結論


 条例(1)は平等原則及び幸福追求権に違反し、違憲であるためFの主張は理由がある。条例(2)は参政権及び地方自治の本旨に違反し、違憲であるためGの主張は理由がない。新宿区の多文化状況は共生の重要性を示すが、憲法の枠内で実現すべきである。


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その他テーマ


以下に、最近の社会事案や憲法関連のホットトピックとして、問題になりそうなテーマをいくつか挙げます。これらは、現在の日本社会(2026年時点)のトレンドを踏まえ、外国人関連の人権、デジタル技術の進展、環境問題、緊急事態対応などを考慮して選定しました。実際の司法試験予備試験では、憲法の基本原理(平等、自由、地方自治など)を問うものが多く、これらを基に問題を作成します。


各テーマについて、憲法予備試験問題(司法試験形式)とその回答を論文式で示します。テーマは3つ挙げ、前の会話の流れ(外国人関連や地方条例)を意識して多角的に選びました。


### テーマ1: AI監視技術の導入とプライバシー権(最近のデジタル社会での争点。2025-2026年にAI顔認証システムの拡大が議論されている)


#### 問題


 東京都は、治安維持と犯罪防止を目的として、条例を制定した。同条例は、公共スペース(駅・公園等)へのAI顔認証カメラの設置を義務付け、収集した個人データを警察当局と共有する。データ利用は「犯罪予防目的」に限定されるが、外国人在住者(ビザ保有者を含む)については、追加で移民管理目的でのデータ活用を許可し、プライバシー侵害の懸念から異議申立制度を設けている。理由として、近年増加するサイバー犯罪や不法滞在に対応するためである。


 H(外国人在住者で、AIカメラによるデータ収集に異議を申し立て、却下された者)は、本条例が憲法に違反するとして争っている。Hの主張の当否について、違憲審査基準を定立した上で、法的根拠を示し、論じなさい。


#### 回答(論文式)


##### 第1 違憲審査基準の定立


 日本国憲法の下、国家行為の違憲審査は、最高裁判所が最終的な審査権を有する(憲法81条)。審査基準として、以下のものを定立する。


 (1) プライバシー権(憲法13条)の審査基準:幸福追求権から派生し、個人情報の自己決定権を保障。規制は目的の正当性、手段の必要性・相当性(最小限侵害原則)を審査し、過度に広汎なものは違憲とする(最高裁平成19年3月6日第三小法廷判決・民集61巻2号619頁、GPS捜査事件判決参照)。デジタル監視は厳格審査を適用し、事前同意や異議申立の有効性を検討。


 (2) 平等原則(憲法14条1項)の審査基準:法令が合理的分類に基づくか、目的の正当性と手段の合理性を審査する。国籍による嫌疑分類は中間審査を要する(最高裁昭和58年5月27日大法廷判決・民集37巻4号345頁、薬事法距離制限事件判決参照)。


 (3) 地方自治の本旨(憲法92条・94条)の審査基準:条例は地方的事項に限られ、国の個人情報保護法に抵触しないかを審査(最高裁平成17年3月23日大法廷判決・民集59巻2号264頁、在外日本人選挙権事件判決類推)。


 本問では、これらの基準を適用し、条例の合憲性を審査する。法的三段論法として、大前提(憲法規範・判例)、小前提(事実・条例内容)、結論(合憲性判断)を用いる。


##### 第2 Hの主張の当否(AI監視とプライバシー侵害)


 Hの主張は、条例がプライバシー権(13条)を侵害し、平等原則(14条)に違反するとする。


 まず、プライバシー権の適用。


 大前提:憲法13条は、個人情報の自己統制権を保障し、AI監視のような広範収集は、目的が公共の福祉で手段が最小限の場合にのみ合憲(GPS捜査事件判決)。


 小前提:条例はAIカメラで顔データを収集・共有するが、公共スペースの常時監視は過度に広汎で、異議申立が事後的・限定的。犯罪予防の目的は正当だが、代替手段(対象限定監視)で達成可能。外国人在住者への追加利用は移民管理を名目にプライバシーを侵害。


 結論:条例はプライバシー権に違反し、違憲。Hの主張は当を得る。


 次に、平等原則の適用。


 大前提:憲法14条1項は、国籍差別を禁じ、中間審査を要する(薬事法距離制限事件判決)。


 小前提:外国人在住者限定の追加データ活用は恣意的分類で、合理的根拠を欠く。


 結論:条例は平等原則にも違反し、違憲。


##### 第3 結論


 条例はプライバシー権及び平等原則に違反し、違憲である。Hの主張は理由がある。


### テーマ2: 気候変動対策としての環境税と財産権(2026年の環境政策強化で議論。カーボン税の地方版が争点)


#### 問題


 京都府は、気候変動対策を目的として、条例を制定した。同条例は、府内企業に対し、CO2排出量に基づく環境税を課し、税収を再生エネルギー基金に充てる。税率は排出量が多い大企業を対象に高く設定し、外国資本企業については追加の監査義務を課す。理由として、2026年の異常気象増加に対応し、持続可能な共生社会を実現するためである。


 I(外国資本企業の経営者で、環境税と監査義務を課せられた者)は、本条例が憲法に違反するとして争っている。Iの主張の当否について、違憲審査基準を定立した上で、法的根拠を示し、論じなさい。


#### 回答(論文式)


##### 第1 違憲審査基準の定立


 日本国憲法の下、国家行為の違憲審査は、最高裁判所が最終的な審査権を有する(憲法81条)。審査基準として、以下のものを定立する。


 (1) 財産権(憲法29条)の審査基準:財産権は公共の福祉のため合理的に制限可能だが、目的の正当性と手段の比例性を審査(最高裁昭和47年11月22日大法廷判決・民集26巻9号1576頁、森林法事件判決参照)。環境税は経済的規制として緩やか審査を適用。


 (2) 平等原則(憲法14条1項)の審査基準:合理的分類を要し、国籍・資本による差別は中間審査(薬事法距離制限事件判決)。


 (3) 地方自治の本旨(憲法92条・94条)の審査基準:条例は地方的事項に限られ、国の税法に抵触しないか審査。


 本問では、これらの基準を適用し、条例の合憲性を審査する。法的三段論法を用いる。


##### 第2 Iの主張の当否(環境税と財産権侵害)


 Iの主張は、条例が財産権(29条)を侵害し、平等原則(14条)に違反するとする。


 まず、財産権の適用。


 大前提:憲法29条は、財産権を保障し、環境対策のための税は公共の福祉で合憲(森林法事件判決)。


 小前提:環境税は気候変動対策の正当目的だが、大企業・外国資本への高税率・監査は過度で、比例性を欠く。代替手段(全国統一税制)で可能。


 結論:条例は財産権に違反し、違憲。Iの主張は当を得る。


 次に、平等原則の適用。


 大前提:憲法14条1項は、資本差別を禁じる(薬事法距離制限事件判決)。


 小前提:外国資本限定の監査は恣意的。


 結論:条例は平等原則にも違反し、違憲。


##### 第3 結論


 条例は財産権及び平等原則に違反し、違憲である。Iの主張は理由がある。


### テーマ3: ヘイトスピーチ規制の強化と表現の自由(最近の多文化社会での争点。2026年にSNS上のヘイトが増加)


#### 問題


 大阪市は、多文化共生を目的として、条例を制定した。同条例は、SNSや街頭でのヘイトスピーチ(特定民族・外国人に対する差別的発言)を禁止し、違反者に罰金(10万円)を科す。外国人在住者が被害者となった場合、追加の支援制度を設ける。理由として、2026年の外国人増加による社会対立を防ぐためである。


 J(ヘイトスピーチを行ったとして罰金を科せられた者)は、本条例が憲法に違反するとして争っている。Jの主張の当否について、違憲審査基準を定立した上で、法的根拠を示し、論じなさい。


#### 回答(論文式)


##### 第1 違憲審査基準の定立


 日本国憲法の下、国家行為の違憲審査は、最高裁判所が最終的な審査権を有する(憲法81条)。審査基準として、以下のものを定立する。


 (1) 表現の自由(憲法21条1項)の審査基準:内容規制は厳格審査を要し、目的の正当性と手段の狭隘適合性を審査(最高裁平成29年6月19日第三小法廷判決・民集71巻5号1235頁、ヘイトスピーチ事件判決参照)。


 (2) 平等原則(憲法14条1項)の審査基準:合理的分類を要する(薬事法距離制限事件判決)。


 (3) 地方自治の本旨(憲法92条・94条)の審査基準:条例は地方的事項に限られる。


 本問では、これらの基準を適用し、条例の合憲性を審査する。法的三段論法を用いる。


##### 第2 Jの主張の当否(ヘイト規制と表現の自由)


 Jの主張は、条例が表現の自由(21条)を侵害し、平等原則(14条)に違反するとする。


 まず、表現の自由の適用。


 大前提:憲法21条1項は、ヘイトスピーチを規制可能だが、曖昧基準は違憲(ヘイトスピーチ事件判決)。


 小前提:条例の禁止範囲が広汎で、罰金は萎縮効果を生む。共生の目的は正当だが、手段が過度。


 結論:条例は表現の自由に違反し、違憲。Jの主張は当を得る。


 次に、平等原則の適用。


 大前提:憲法14条1項は、被害者限定支援を許容(薬事法距離制限事件判決)。


 小前提:外国人在住者支援は合理的。


 結論:この点は合憲だが、全体として違憲。


##### 第3 結論


 条例は表現の自由に違反し、主に違憲である。Jの主張は理由がある。


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by Gemini

時事問題を題材に、司法試験・予備試験の論文式試験で問われやすい論点を整理した問題と回答例を作成しました。

それぞれのテーマについて、憲法上の権利(基本権)や統治の原則、法的三段論法に基づいた構成にしています。

第1問:AI利用による教育の弊害と公教育の責務

【問題】

 文部科学省は、生成AIの急速な普及を受け、児童生徒の思考力や創造性への弊害を防ぐため、公立学校における特定の学習場面でのAI利用を全面的に禁止する指針を検討している。これに対し、一部の保護者や生徒は、情報収集の効率化や個別最適化された学習機会を奪うものであり、憲法上の権利を侵害すると主張している。

 この指針の憲法適合性について、教育を受ける権利(26条)および自己決定権(13条)の観点から論じなさい。

【回答のポイント】

 * 教育を受ける権利(26条)の性格: 26条は学習権を保障しているか(旭川学テ事件参照)。国家の教育権と父母・教師の教育の自由の対立を整理。

 * 制約の合理性: AI禁止が「子どもの成長発達権」を阻害するのか、それとも「教育の質を維持するための合理的裁量」なのか。

 * 違憲審査基準: 教育内容に関する国の裁量は広範であるが、手段が目的(思考力育成)に対して著しく不合理でないかを「合理性の基準」ないし「厳格な合理性の基準」で検討。

第2問:特定外国人による治安対策と入管法・平等原則

【問題】

 特定の国籍を持つ外国人が居住する地域において、犯罪率の増加を理由に、当該国籍の者に対してのみ、夜間の外出を制限し、警察による職務質問を強化する特別条例を自治体が制定したとする。また、国もこれに呼応し、当該国籍者の在留資格更新を厳格化する運用を開始した。

 これらの措置について、憲法14条1項および13条、22条1項の観点から論じなさい。

【回答のポイント】

 * 14条1項(平等原則): 「国籍」という属性による差別。判例(マクリーン事件)は外国人の基本権享受性を認めるが、政治的決定(入管行政)には広範な裁量を認めている。

 * 違憲審査基準: 人種や国籍による区別は「疑わしい区分」として厳格な審査(目的が不可欠、手段が最小限度)を課すべきか。治安維持という目的と、特定国籍全員を対象とする手段の均衡。

 * 22条1項(居住・移転の自由): 外国人に「入国の自由」はないが、「在留の自由」や「国内移動の自由」がどの程度保障されるか。

第3問:日本国旗損壊罪の創設と表現の自由

【問題】

 現行の刑法92条(外国国章損壊罪)は、外国の国旗等を損壊する行為を処罰しているが、日本国旗を損壊する行為については処罰規定がない。これを「不均衡である」とし、日本国旗を侮辱する目的で損壊・汚損した者を処罰する「日本国旗損壊罪」を新設する立法案が提出された。

 この立法案が、憲法21条1項の「表現の自由」を侵害するか論じなさい。

【回答のポイント】

 * 象徴的表現(Symbolic Speech): 国旗を焼く等の行為が、政治的意見を表明するための「表現」に該当するか。

 * 二重の基準論: 表現の内容(政治的批判)に着目した規制か、それとも内容中立的な規制(公共の安寧)か。

 * 違憲審査基準(厳格な基準): * 目的:国の威信保持や国民感情の保護は、表現の自由を制限するほどの「やむにやまれぬ利益」か。

   * 手段:LRA(より制限的でない他の手段)はないか。

   * 比較:アメリカの「テキサス州対ジョンソン事件」判決等を参考に、思想の自由市場における「反論」で対応すべきではないか、と展開。

【司法試験対策としての学習アドバイス】

 * 判例の射程を見極める: 例えば第2問なら、マクリーン事件判決(外国人の人権には制約がある)を引用しつつも、「現代の国際社会において、国籍のみを理由とした一律の行動制限が許容されるか」という、判例の射程を超える議論を組み立てることが高評価に繋がります。

 * 憲法上の「価値の対立」を明示する: 「教育の質 vs 個人の自由」「治安維持 vs 平等権」「国の象徴の尊厳 vs 表現の自由」といった対立軸を、答案の冒頭(問題の所在)で明確に提示することが重要です。

 * 違憲審査基準のあてはめ: 単に基準(LRAの基準など)を立てるだけでなく、「なぜその基準なのか(権利の重要性と規制の態様)」を丁寧に記述し、具体的な事案(AIの弊害、特定地域の犯罪数など)に深くあてはめてください。


☆☆☆

第1問への回答


第1問の「AI利用による教育の弊害」を題材とした、司法試験・予備試験レベルの論文回答例を作成します。

この問題の核心は、**「誰に教育の決定権があるのか(国家か父母・教師か)」という憲法学上の対立と、「新しいテクノロジー(AI)の使用が学習権の一部として保障されるか」**という点にあります。

第1問:公立学校におけるAI利用禁止措置の憲法適合性

第1 教育を受ける権利(26条)との関係

1. 子どもの学習権と国の教育権

 憲法26条1項は、国民がその能力に応じて等しく教育を受ける権利を保障している。この権利の核心は、子どもが個人として成長・発達し、自己完成を遂げるために必要な教育を受ける「学習権」にある(旭川学テ事件参照)。

 この学習権を具体化するにあたり、公立学校の教育内容を決定する権限は誰にあるか。判例は、国は必要かつ相当と認められる範囲において教育内容を決定する権限(国の教育権)を有するが、それは「子どもの自由な成長を妨げるような国家的介入」であってはならないとしている。

2. 本件指針の憲法適合性

 文部科学省が検討しているAI利用の全面的禁止は、情報収集の効率化や個別最適化された学習という、現代社会において必要不可欠なリテラシー習得の機会を奪う側面がある。

 しかし、教育の目的は単なる知識の獲得だけでなく、思考力や創造性の涵養にある。AIへの過度な依存がこれらの能力を阻害すると判断することは、専門的・技術的な教育的裁量として尊重されるべきである。

 したがって、一律の全面禁止が「不当な支配(教育基本法16条)」や「学習権の根幹を侵害する著しく不合理な制限」に該当しない限り、直ちに違憲とはならない。

第2 自己決定権(13条)との関係

1. 憲法上の権利の該当性

 生徒側が主張する「AIを学習ツールとして選択する自由」は、自己の学習方法を決定する権利として、憲法13条の自己決定権の一内容として構成し得る。

2. 違憲審査基準の定立

 もっとも、公立学校という教育現場においては、学習の平等を確保し、教育目的を達成するために個人の自由はある程度の制約を受ける。

 よって、本件措置の違憲性は、(1)目的が正当であり、(2)その目的と手段の間に合理的な関連性があるかという「合理性の基準」によって判断すべきである。

3. あてはめ

 (1) 目的について:児童生徒の思考力・創造性の低下を防ぐという目的は、26条が企図する教育の目的からして正当である。

 (2) 手段の関連性について:特定の学習場面(基礎学力形成期等)における禁止は合理的といえるが、「全面的禁止」という手段は、AIを活用した情報リテラシー教育の機会まで奪うものであり、目的達成のために過剰である可能性がある。

第3 結論

 AI利用を「特定の学習場面」に限定して禁止することは合憲であるが、公教育全体において「全面的に」禁止することは、子どもの学習権および将来の社会生活に必要な能力形成を不当に阻害する疑いがあり、手段の相当性を欠く。

 したがって、本件指針が例外なき全面禁止を求めるものであれば、憲法26条および13条に抵触し、違憲となる余地がある。

以上

【議論の回答:法的構成のポイント】

 * 「旭川学テ事件」の活用: 昭和51年の古い判例ですが、「国の教育権」と「国民の教育の自由」の折衷案(必要かつ相当な範囲での国定性)を維持しつつ、AIという現代的課題にスライドさせて論じるのが定石です。

 * 「能力に応じて」の解釈: 26条の「能力に応じて」とは、AIなどのツールを使って能力を伸ばすことも含む、という生徒側の反論を想定することが評価のポイントになります。

 * 裁量と限界: 教育の専門的事項については行政(文科省)に広い裁量を認めつつも、「全面禁止」という過剰な手段に対して「LRA(より制限的でない他の手段)」があるのではないか(例:一部制限やリテラシー教育の併用)と指摘することで、論文としての深みが出ます。


☆☆☆

第2問への回答

第2問の「特定外国人に対する治安対策(外出制限・職務質問強化)および在留資格更新の厳格化」に関する回答例を作成します。

この問題は、憲法14条(平等原則)と、外国人の人権の享有性を認めたマクリーン事件判決の射程、そして**「人種・国籍」という性質による差別の違憲審査基準**をいかに立てるかが勝負となります。

第2問:特定外国人に対する差別的措置の憲法適合性

第1 特別条例(夜間外出制限・職質強化)の憲法適合性

1. 憲法14条1項違反の検討

 本件条例は、特定の国籍を持つ者のみを対象として外出制限等を課しており、国籍による「差別」が存在する。14条1項は「人種、信条、性別、社会的身分」を例示するが、これらに類する「自らの意思で選択・変更できない属性」による差別については、特に厳格に審査されるべきである。

2. 違憲審査基準の定立

 外国人の人権も、性質上可能な限り保障される(マクリーン事件)。特に、移動の自由(22条1項)や身体の自由(31条)を国籍のみを理由に制限することは、基本的人権の本質的侵害に繋がりかねない。

 したがって、本件のような「疑わしい区分」に基づく制限については、(1)重要な公共の利益のために必要不可欠であり、(2)その手段が目的達成のために必要最小限度であること、が求められる(厳格な基準)。

3. あてはめ

 治安維持(犯罪抑止)という目的自体は正当であるが、特定の国籍者全員を一律に「潜在的犯罪者」とみなして外出制限を課すことは、個人の尊厳(13条)を著しく損なう。統計上の犯罪率が高いとしても、個別の疑いがない者にまで制限を課すことは手段の相当性を欠き、必要最小限度とはいえない。

 よって、本件条例は憲法14条1項に反し、違憲である。

第2 在留資格更新の厳格化の憲法適合性

1. 外国人の在留の自由

 最高裁(マクリーン事件)は、外国人に「入国の自由」は認められず、「在留の自由」も憲法上保障されているわけではないとしている。在留の許否は国の自由な裁量に委ねられており、法務大臣は更新の判断において広範な裁量権を有する。

2. 裁量権の逸脱・濫用

 しかし、行政の裁量権といえども無限定ではない。特定の国籍であることのみを理由に、個別の素行に関わらず一律に更新を厳格化(実質的な排除)することは、他事考慮あるいは正当な理由のない差別にあたる可能性がある。

 入管行政の政治的性格を考慮し、司法審査は「事実の基礎を欠くか、社会通念上著しく妥当性を欠く場合(裁量権の逸脱・濫用)」に限定されるが、国籍のみを基準とした一律の不利益扱いは、この限界を超えるものと解すべきである。

第3 結論

 自治体による条例は、個人の身体・移動の自由を国籍により差別的に制限するものであり違憲。国の入管運用についても、個別の事情を考慮しない国籍一括の厳格化は、裁量権の逸脱として違法(ひいては平等原則の趣旨に反し違憲)と判断されるべきである。

以上

【議論の回答:法的構成のポイント】

 * 「マクリーン事件判決」の二面性:

   * この判決は「外国人の人権を認める」一方で、「在留の自由は認めず、行政に広い裁量を認める」という両義的な面を持っています。

   * 答案では、「身体の自由(条例)」と「在留の資格(入管行政)」を分けて論じるのがスマートです。前者は司法審査を厳しく、後者は裁量権を認めつつもその限界を突くという構成です。

 * 「疑わしい区分」の強調:

   * 国籍や人種は、本人の努力で変えられない属性です。これで差別することは、ナチスなどの歴史的反省から生まれた憲法の精神に最も反するため、**「厳格な審査基準」**を導き出しやすくなります。

 * 条例と法律の優位性:

   * 地方自治体が、国の法律(入管法等)を超えて、特定の国籍者にのみ義務を課すことは、憲法94条(法律の範囲内の条例)の観点からも問題になり得るという点に触れると、さらに加点が得られます。


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第3問の回答

第3問の「日本国旗損壊罪の新設」に関する回答例を作成します。

この問題は、「旗を焼く」という物理的行為が「表現(メッセージ)」として憲法21条1項の保護を受けるかという点と、「国旗の尊厳」という抽象的な利益が、表現の自由を制限するに足りる「正当な利益」かという点が最大の争点です。

第3問:日本国旗損壊罪の新設と表現の自由

第1 「表現の自由」(21条1項)による保護の有無

1. 象徴的表現の該当性

 本件の「国旗の損壊」は物理的破壊行為であるが、それが政治的意見(現体制への抗議等)を表明する目的で行われる場合、「象徴的表現(Symbolic Speech)」として憲法21条1項の保障を受ける。文字や言語によらない非言語的行為であっても、表現の意図があり、かつ受け手がそれをメッセージとして理解し得る場合には、表現の自由の射程に含まれる(通説的見解)。

第2 本件立法の憲法適合性

1. 違憲審査基準の定立

 表現の自由は、自己実現・自己統治の価値を有する民主主義の根幹をなす権利であるため、その制限は厳格に審査されるべきである(二重の基準論)。

 特に、本件立法は「侮辱する目的」で行われる損壊を処罰の対象としており、表現の内容に着目した制限(内容着目規制)である。このような規制は、思想の自由市場を歪めるおそれがあるため、(1)やむにやまれぬ公的な利益のために、(2)必要最小限度の制限であること、が要求される(厳格な基準)。

2. あてはめ

(1) 目的の正当性

 立法の目的は「国の威信保持」や「国民感情の保護」にある。しかし、自由な民主主義社会において、国の象徴に対する批判や反感の表明は、それがたとえ不快な方法であっても許容されるべきである。特定の象徴に対する「敬意」を刑罰によって強制することは、憲法19条(思想・良心の自由)の趣旨にも反し、表現を制限する「やむにやまれぬ利益」とは認めがたい。

(2) 手段の相当性(LRAの検討)

 仮に目的が正当だとしても、損壊行為が他者の身体や財産に直接の危険(放火の危険等)を及ぼさない限り、刑事罰という強力な手段で一律に禁止することは過剰である。国旗の尊厳を守るためには、公的な啓発や反論による説得など、より制限的でない他の手段(LRA)が存在する。

3. 外国国章損壊罪(刑法92条)との均衡について

 92条の目的は、外国との親善関係の維持および国際紛争の防止という「外交上の実利的利益」にある。これに対し、自国の国旗損壊を罰することは、内政上の思想統制に近い性質を持ち、両者は同列に論じられない。不均衡を解消するならば、自国旗を処罰するのではなく、外国国章損壊罪の存廃を議論すべきである。

第3 結論

 本件立法案は、正当な理由なく特定の政治的表現を内容に基づいて禁止するものであり、憲法21条1項に反し違憲である。

以上

【議論の回答:法的構成のポイント】

 * 「象徴的表現」の概念:

   * 司法試験では、単に「表現の自由」とするだけでなく、行為による表現であることを示すこの用語を使うと専門性が高まります。

 * アメリカ連邦最高裁「テキサス州対ジョンソン事件」:

   * 1989年のこの判決は、星条旗を焼く行為を「表現の自由」として合憲(処罰を違憲)としました。「政府がそのシンボルに反対する意見を禁止することで、そのシンボルを保護することはできない」という法理は、日本憲法下でも非常に強力な論拠となります。

 * 内容着目規制 vs 内容中立規制:

   * 「国旗を粗末に扱って火事になったから処罰する(消防法等)」のは内容中立ですが、「国を侮辱する意図で損壊したから処罰する」のは内容着目です。この区別を明確にすることで、厳格な審査基準を導き出す論理が強固になります。

これで、ご提示いただいた3つの時事ネタ(AI教育、外国人対策、国旗損壊罪)についての回答が揃いました。

どれも現代の司法試験で非常に「出やすい」構成です。共通して言えるのは、「政府の言い分(治安や伝統)」と「個人の自由(人権)」のどちらを重く見るかを、憲法上の言葉(基準)を使って整理することです。


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これまでのテーマ以外で、現在進行形で議論されており、司法試験・予備試験の憲法論文として「極めて出題可能性が高い」トピックを3つ厳選しました。

特に**「緊急事態」「能動的サイバー防御」「SNS規制」**は、現代的な権利の衝突が鮮明なテーマです。

第4問:緊急事態における国会議員の任期延長

【問題の所在】

 大規模災害や感染症の蔓延により選挙の実施が困難な場合、憲法が定める「任期(衆院4年、参院6年)」を超えて議員の任期を延長できるか。現行憲法には明文規定がないが、国会機能を維持する必要性から憲法改正や解釈の変更が議論されている。

【論点:統治機構・民主主義】

 * 参議院の緊急集会(54条2項)の限界: 緊急集会はあくまで「一時的」なものであり、長期の事態に対応可能か。

 * 国定の任期の厳格性: 選挙という「国民主権」の根幹を、手続なしに延長することが許されるか(民主的正統性の欠如)。

 * 議論の方向性: 司法試験では「制度設計の是非」というよりは、「現状の憲法下でどこまで対応可能か」という解釈の限界を問う形式が想定されます。

第5問:能動的サイバー防御(アクティブ・サイバー・ディフェンス)

【問題の所在】

 政府が重大なサイバー攻撃を未然に防ぐため、攻撃者のサーバー等に侵入・無害化する「能動的サイバー防御」の導入が検討されている。しかし、これには通信内容の監視や他者システムへのアクセスを伴うため、憲法上の権利との衝突が不可避である。

【論点:精神的自由・通信の秘密】

 * 通信の秘密(21条2項後段): 政府による常時監視や情報の取得が、通信の秘密を侵害しないか。

 * プライバシー権(13条): 攻撃者のみならず、第三者の情報が巻き込まれる可能性(オーバーブロード:広範すぎる規制)の検討。

 * 公共の福祉による制約: 国家の安全保障(生存権の前提)という利益が、通信の秘密をどの程度凌駕し得るか。

   *

第6問:SNS上の誹謗中傷対策と「プロバイダ責任制限法(情報流通プラットフォーム対処法)」

【問題の所在】

 SNSでの誹謗中傷やフェイクニュースの拡散に対し、プラットフォーム事業者に削除義務を課したり、迅速な情報開示を求める法改正が進んでいる。これにより、表現の自由が過度に抑制される「検閲」や「萎縮効果」が懸念されている。

【論点:表現の自由】

 * 検閲の禁止(21条2項前段): 政府が直接削除するのではなく、事業者に「削除の努力義務」を課すことが、実質的な検閲にあたるか。

 * 萎縮効果(Chilling Effect): 曖昧な基準での削除要請が、国民の自由な発言を控えさせる結果を招かないか(明確性の原則)。

 * 私人間効力: プラットフォーム事業者という「私企業」が、ユーザーの表現の自由を制限することに憲法がどう関与するか(三菱樹脂事件等の法理の応用)。

【司法試験対策アドバイス:2026年の視点】

最近の試験では、単に「合憲か違憲か」を答えるだけでなく、**「どのような制度設計(代替案)であれば憲法に適合するか」**を書かせる問題が増えています。

 * キーワード: 「比例原則(目的と手段のバランス)」「LRAの検討(もっと緩やかな手段はないか)」「手続的保障(適正手続)」

 * アプローチ: まず「守られるべき権利」を最大化して描き、次に「制限が必要な理由(公共の利益)」を提示し、最後に「その制限がギリギリ最小限であることを証明する」という三段論法を徹底してください。

これらのテーマの中で、具体的な「回答例(論文構成)」を詳しく見たいものはありますか?

衆院憲法審査会 今後の議論の方向性について(2025年12月4日)

この動画は、2025年末の最新の国会議論を反映しており、緊急事態条項や自衛隊明記など、今まさに憲法改正論議の焦点となっているリアルな論点を確認するのに役立ちます。


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第4問の「緊急事態条項(特に国会議員の任期延長)」に関する問題と回答例を作成します。

この問題は、**「国民主権(選挙権)」と「統治機構の継続性」**の究極の衝突を問うものです。現行憲法下の解釈(参議院の緊急集会)で対応可能か、それとも憲法改正が必要な「立法の不備」があるのかを論理的に組み立てる必要があります。

第4問:緊急事態における国会議員任期延長の是非

【問題】

 大規模災害や外部からの武力攻撃等、選挙の適正な実施が長期間にわたって困難となる緊急事態において、国会機能を維持するために国会議員の任期を延長する措置を講じることの憲法上の是非について論じなさい。その際、現行憲法54条2項の「参議院の緊急集会」の機能と限界に触れつつ、任期延長を認める場合の制度的条件(濫用防止策)についても言及しなさい。

【解答例】

第1 問題の所在

 日本国憲法は、衆議院議員の任期を4年(45条)、参議院議員を6年(46条)と厳格に定めている。これは、定期的な選挙を通じて国民の信託を更新するという「国民主権(1条)」および「議会制民主主義」の要請に基づく。

 しかし、未曾有の災害等で選挙が実施できず、全議員が任期満了を迎えた場合、国会が消滅し、二院制(42条)や権力分立が機能不全に陥るおそれがある。この事態に現行憲法の解釈で対応できるか、あるいは新たな立法(憲法改正)が必要かが問われる。

第2 現行憲法下の対応とその限界

1.参議院の緊急集会(54条2項)の活用

 現行憲法は、衆議院の解散中に緊急の必要がある場合、参議院のみで国会の権能を代行させる「緊急集会」を認めている。

 この規定を「任期満了時」にも類推適用し、選挙が実施できるまで参議院が暫定的に立法や予算審議を行うべきとの見解がある。

2.緊急集会の限界

 しかし、緊急集会はあくまで「衆議院の解散」という一時的な不在を想定した「暫定・臨時」の制度である。

 (1) 期間の限界: 選挙後の国会の同意(54条3項)を前提としており、数ヶ月〜年単位の長期事態は想定されていない。

 (2) 民主的正統性の限界: 二院制の原則(42条)から逸脱し、国民の一部(参議院のみ)の代表が長期にわたり国権を独占することは、国民主権の観点から問題がある。

 したがって、広範かつ長期の緊急事態においては、緊急集会のみでの対応には憲法上の限界がある。

第3 任期延長を認める場合の違憲審査的視点(濫用防止)

 もし立法(憲法改正)により任期延長を認める場合、それは「選挙権(15条1項)」という基本的人権の重大な制約となる。そのため、以下の厳格な要件(比例原則)を満たす必要がある。

1.目的の正当性と必要性

 単なる政治的便宜ではなく、「選挙の実施が物理的・客観的に不可能」であり、かつ「国会機能の維持が国家存立に不可欠」な場合に限定されるべきである。

2.手段の相当性と濫用防止策

 時の政権が保身のために任期を延長する「権力の自己増殖」を防ぐため、以下の手続的歯止めが必要である。

 (1) 決定主体: 内閣の一存ではなく、国会による特別多数決(例:各議院の3分の2以上の賛成)を要すること。

 (2) 期間の限定: 1回あたりの延長期間を限定し、事態の推移に応じて逐次審査すること。

 (3) 司法審査: 延長決定の妥当性について、最高裁判所等が事後的に、あるいは迅速に審査する仕組みを設けること。

第4 結論

 現行憲法下では参議院の緊急集会が唯一の回避策であるが、その限界に鑑みれば、国民主権を維持しつつ国会機能を守るための「任期延長規定」の整備は、検討に値する。ただし、それは選挙権という基本的人権を最小限に制限するものでなければならず、厳格な手続的保障が不可欠である。

以上

【解説:司法試験論文としてのポイント】

 * 「制度の趣旨」から語る:

   なぜ任期があるのか(民主的正統性の定期的更新)と、なぜ国会が必要なのか(権力分立・内閣の統制)を対比させるのが「憲法らしい」書き方です。

 * 参議院の緊急集会の位置づけ:

   緊急集会の解説では、「解散」と「任期満了」を区別しつつも、類推適用の可否について触れると、判例・学説を深く理解していることをアピールできます。

 * 「権力の自己増殖」への懸念:

   ドイツのワイマール憲法の失敗(緊急権の濫用が独裁を招いた歴史)を背景に、なぜ「3分の2以上の議決」や「司法チェック」が必要なのかという「権力分立論」を展開すると高評価に繋がります。

この「任期延長」は、近年の憲法審査会で最も議論が煮詰まっているテーマの一つですので、2026年以降の試験でも最頻出トピックと言えます。


☆☆☆

第5問の「能動的サイバー防御(アクティブ・サイバー・ディフェンス:ACD)」に関する問題と回答例を作成します。

このテーマは、**通信の秘密(21条2項後段)**という極めて強力な保障と、国家・国民の安全保障という公共の利益が真っ向から衝突する、現代憲法の最前線といえる論点です。

第5問:能動的サイバー防御と「通信の秘密」

【問題】

 政府は、重要インフラ(電力、通信等)に対する大規模なサイバー攻撃を未然に防ぐため、攻撃の兆候を検知した段階で攻撃者のサーバーに侵入し、無害化する「能動的サイバー防御」の導入を検討している。この措置を実現するためには、政府が国内の通信事業者のネットワークを常時監視し、通信内容の一部を解析することが必要となる。

 このような政府による通信情報の取得・解析が、憲法21条2項後段の「通信の秘密」との関係でどのような問題を生じるか、違憲審査の基準を示した上で論じなさい。

【解答例】

第1 通信の秘密(21条2項後段)の侵害

1.保障の範囲と侵害の意義

 憲法21条2項後段は「通信の秘密」を絶対的に保障している。これは、個人のプライバシー保護のみならず、自由なコミュニケーションを通じた表現の自由の基盤を保障するものである。

 政府による通信情報の「取得」および「解析」は、発信者や受信者の意図に反して通信の内容や属性(メタデータ等)を把握する行為であり、通信の秘密に対する「侵害」にあたる。

2.「検閲」との区別

 政府が通信を常時監視し、攻撃者の通信を無害化(遮断)することは、憲法21条2項前段が絶対的に禁止する「検閲」に該当しないか。

 検閲とは、行政権が主体となり、表現物を対象として、発表前にその内容を審査し、不適当と認めるものの発表を禁止することを指す。サイバー防御は「攻撃という物理的破壊活動の阻止」を目的としており、思想の表明を抑制する目的(内容着目)ではないため、直ちに「検閲」には当たらないと解する。

第2 違憲審査基準の定立

1.制約の許容性

 通信の秘密は極めて重要な権利であるが、無制限ではなく、他人の生命・身体・財産を保護するための「公共の福祉(12条、13条)」による必要最小限度の制約は免れない。特に、サイバー攻撃が国民生活に壊滅的な被害を及ぼす現代において、国家の安全保障は「やむにやまれぬ利益」といえる。

2.基準の定立

 通信の秘密という精神的自由の基盤を侵害するものである以上、その合憲性は**(1)目的が真にやむを得ない重大なものであり、(2)手段が目的達成のために必要不可欠かつ最小限度であること**、という厳格な基準によって判断されるべきである。

第3 あてはめ

1.目的の重大性

 重要インフラを麻痺させるサイバー攻撃を未然に防ぐことは、国民の生命・安全を守る上で真にやむを得ない重大な目的である。

2.手段の相当性(LRAの検討)

 政府による「常時監視」や「無害化」が、以下の要件を満たしているかが焦点となる。

 (1) 対象の限定: 攻撃と無関係な一般市民の通信を広範にスキャンしていないか。

 (2) 手続的保障: 捜査機関による令状(35条)に類する司法の事前チェックが介在しているか。

 (3) 事後監視: 取得した情報の目的外利用が厳格に禁止され、独立した第三者機関による監督が行われているか。

 本問において、仮に「無差別かつ司法の関与のない常時監視」が行われるのであれば、それは手段の相当性を欠き、違憲となる可能性が高い。

第4 結論

 能動的サイバー防御は、国家の安全保障上正当な目的を有する。しかし、通信の秘密が民主社会の存立基盤であることに鑑みれば、法整備にあたっては、対象を重大攻撃に限定し、司法の関与や独立した監視体制を構築するなど、必要最小限度の制約に留める厳格な枠組みが不可欠である。

以上

【解説:司法試験論文としてのポイント】

 * 「通信の秘密」の二面性:

   プライバシー保護の側面(13条的)と、自由な言論空間の確保(21条的)の両面から論じると加点されます。

 * 「検閲」の定義との整合性:

   サイバー攻撃の「遮断」が検閲(絶対禁止)に当たるかどうかは大きな議論の分かれ目です。判例(北方ジャーナル事件等)の検閲の定義を正確に引用し、「内容の審査」があるか否かを緻密に検討してください。

 * 令状主義(35条)との関係:

   サイバー空間の監視は、物理的な「捜索・押収」とは異なりますが、プライバシー侵害の程度は同等以上です。司法試験では「令状主義の趣旨」がサイバー空間でも妥当することを指摘するのが定石です。

能動的サイバー防御は、現在「能動的サイバー防御法(仮称)」として立法化が検討されています。政府の有識者会議でも「通信の秘密」との整合性が最大の難所となっているため、この論理構成を覚えておくことは非常に有効です。

次は第6問(SNS規制)について作成しますか?それとも他の論点について質問がありますか?


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第6問の「SNS上の誹謗中傷対策と表現の自由」に関する回答例を作成します。

この問題は、2024年に成立した**「情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法の改正)」を念頭に、「表現の自由(21条1項)」と、他人の「名誉権・プライバシー権(13条)」**をどう調整するか、という点が最大の論点です。

第6問:SNS上の誹謗中傷対策と表現の自由

【問題】

 SNS等の大規模プラットフォーム事業者に対し、誹謗中傷等の権利侵害情報の削除申し出があった場合、一定期間内に削除の可否を判断し、その結果を通知することを義務付ける法律が制定された。これに対し、表現者側からは「事業者が法的リスクを恐れて過度に削除を行う(萎縮効果)」との懸念が示されている。

 この法律の憲法適合性について、表現の自由(21条1項)および検閲の禁止(同条2項)の観点から論じなさい。

【解答例】

第1 「検閲」(21条2項前段)への該当性

1. 検閲の定義

 検閲とは、行政権が主体となり、思想内容等の表現物を対象として、発表前にその内容を審査し、不適当と認めるものの発表を禁止することをいう(税関検査事件判決)。

2. 本件法律の検討

 本件法律は、行政機関が直接削除を行うのではなく、民間のプラットフォーム事業者に判断を委ねている。また、事後的な削除の適正化を求めるものであり、発表前の「網羅的な審査」ではない。したがって、絶対的に禁止される「検閲」には当たらない。

第2 表現の自由(21条1項)の侵害

1. 公共の福祉による制約と審査基準

 SNS上の表現も憲法21条1項により保障される。一方、他人の名誉権やプライバシー権(13条)も重要な人権であり、表現の自由はこれらと衝突する場合には「公共の福祉」による制約を受ける。

 本件のような「誹謗中傷対策」は、名誉棄損という他者の権利侵害を止める正当な目的を有する。しかし、削除義務の基準が曖昧であれば、表現者が過度に発言を控える「萎縮効果」を招く。したがって、(1)目的が正当であり、(2)手段が目的達成のために必要最小限度であるか(比例原則)、という基準で判断すべきである。

2. 手段の相当性の検討

(1) 萎縮効果の回避

 事業者が削除を怠った場合に過大な罰則を課すような仕組みであれば、事業者は「疑わしいものはすべて消す」という安全策をとり、適法な批判まで削除されるおそれがある。これを防ぐためには、削除対象が「権利侵害が明白なもの」に限定されているか、事業者の裁量が適切にコントロールされているかが重要となる。

(2) 手続き的保障

 表現者に対する反論の機会の付与や、削除理由の開示、不服申し立て手続きの整備が行われているのであれば、手段の相当性は認められやすい。

第3 私人間効力の観点(三菱樹脂事件法理の応用)

 プラットフォーム事業者は私企業であり、本来は誰の表現を掲載するかは事業者の自由(営業の自由)である。しかし、SNSが現代の「公論の場(パブリック・フォーラム)」として機能している実態に鑑みれば、事業者の恣意的な削除は実質的に表現の自由を根底から損なう。

 よって、国が法律を通じて事業者に適切な削除手続きを強制することは、私人間における基本的人権の調整として憲法上許容されるだけでなく、むしろ被害者の権利救済のために要請されるものといえる。

第4 結論

 本件法律は、権利侵害が明白な場合に限定した手続きの適正化を求めるものであれば、他者の名誉保護という正当な目的のための必要最小限度の制約として、合憲である。

以上

【解説:司法試験論文としてのポイント】

 * 「萎縮効果(Chilling Effect)」の明示:

   「消されすぎる」ことが、民主主義における自由な議論をどう損なうかを論理的に記述することが、憲法論文としての深みを生みます。

 * 私人間効力論の導入:

   憲法は本来「国家 vs 個人」のルールですが、SNS問題では「巨大IT企業 vs 個人」の構図が重要です。「三菱樹脂事件」以来の「間接適用説」を念頭に、国が私企業(SNS)を規制することの正当性を論じます。

 * 権利の衝突の調整:

   「表現者の自由」vs「被害者の名誉」という対立軸を立て、どちらか一方が勝つのではなく、バランス(手続きの適正化)で解決するという着地点が、実務・司法試験ともに好まれる答案構成です。

今後の学習に向けたアドバイス

これで全6問の時事憲法問題が揃いました。これらは2026年の司法試験・予備試験において、短答式・論文式問わず非常に重要なテーマです。

 * 憲法解釈の「武器」を持つ: 「21条(表現)」「13条(プライバシー・自己決定)」「14条(平等)」といった頻出条項について、自分なりの「違憲審査基準の立て方」をパターン化しておくと、どんな時事問題にも対応できます。

 * 最新の立法動向を追う: 今回扱ったAI、サイバー防御、SNS、緊急事態は、現在進行形で法律が作られたり改正されたりしています。

さらに特定の判例(例えば「北方ジャーナル事件」や「マクリーン事件」)のあてはめを練習したい、あるいは行政法や刑法などの他科目でも時事問題を作ってほしいといったご要望はありますか?








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